なんである
まず、そのスタイリング。
雑誌やネット上に掲載された写真からは、もっと新奇なモノを想像していましたが、思ったよりも落ち着いるというのが、第一印象。
アンダーフロアエンジン(というか、リアエンジン)という、新しい「酒」のための、新しい「革袋」としては、新しさを示すアイコンとしても、そこからもたらされる機構的な利点を享受するという意味でも、よく考えられた形に仕上がっています。
さて、この車についてはスマートとの類似性がよくいわれています。
外観については、ワタシも雑誌やネット上で公開されていた画像から、もっと似た車だと想像していました。
しかし、実車を目の前にしてみると、確かにフロントフェンダー先端部等、類似性を感じさせる部分はあるものの、思ったよりも類似性を感じなかったというのが正直な感想です。
それよりも、最近の日本製ミニバンや欧州製のコンパクトカーのディティールからの影響を感じました。特にそのプロポーションはトヨタのエスティマあたりの強い影響を感じます。
ちなみに応対をしてくださった担当者は「実車を見るまでは、(スバル) R2に似ているような気がして心配したが、それほどでもなかった」とのこと。
外観だけでなく、“i” の特徴であるエンジンの配置等の機構的な面でも、スマートとの類似性がいわれています。
確かによく似た配置です。しかし、これはクライスラーグループ内での「大人の事情」があったのではないでしょうか。
実際、兄貴分のコルトとスマート・フォー・フォーの関係もありますので、あながち穿ち過ぎではないでしょう。
内装はインパネやドア内側のノブ等、少々質感に欠ける部分も散見されましたが、全体としては実用上も過不足無く、シンプルな中にも外観に見合ったモダンさをうまく表現できています。
1点のみ気になったのは、シフトレバー前部の物置トレイの形状。
平らな足許の空間を生かすため、物を置くことのできるトレイが設えてありますが、トレイの縁の高さが低く、コーナーリング時等に置いた物が転げ出てしまう可能性があります。
確かに足許の広々感を演出し、トレイ状の方が使い易いのは確かですが、安全性を考えた場合、再考をお願いしたいところです。
試乗車も用意されていましたので、試乗させて頂きました。
試乗車はおそらく最量販グレードとなるであろう “M” の4WD。
試乗はディーラー付近の若干渋滞した路面から、脇道、そして自動車専用道(≠高速道路)を廻って返ってくるという、約30分ほどの経路。
渋滞の中で発進、停車を繰り返すような場面では、若干エンジンの唸り音が気になることもありましたが、全般的にノイズはよく抑えられていると感じました。但し、後席に座っていた場合には印象が変わったのかも知れませんね。
ちなみにエンジンは全般的に高めの回転数(2,500~4,000rpm程度)で回っている印象があり、リッターカークラスの車と比べると、やはりエンジンが常時唸っているような印象を受けるのは否めないところです。この辺が軽自動車の枠に収められた宿命でしょうか。
可変バルブタイミングを奢られた新開発エンジンは、低回転から高回転までスムーズに吹け上がり、細かいスロットル操作にも機敏に反応する、気持ちよさも持ち合わせていました。
ターボも作動時の段付きを感じさせないのは、実用車として好感が持てるセッティングです。
ミッションも変速時のショックは殆ど気にならず、いまどきの日本車として平均値を確保した仕上がりでしょう。
ちなみにソフトレバーのゲートにスタッガート式を採用しているのは、軽自動車としては珍しいような気もします。
3速→D の切替の際、一瞬ニュートラル(N)に入れてしまうということもありました。これはワタシがスタッガート式に慣れていないせいもありますが、もう少々、レバー動作の際にかっちりした感触を伝えてくれるようなチューニングがあれば嬉しかったところです。
足回りのセッティングは柔らかくもなく、堅過ぎもせず。更にスピードを上げていくと印象は変わるかも知れませんが、各速度域で適度なダンピングと剛性感を伝えてくれる、適切なところにまとめられているように感じました。
電動パワーステアリングの操舵感も自然。個人的には停止~極低速時のアシスト量が過多な気もしましたが、この車の主な購買層となる人たちにとっては、むしろ喜ばれるセッティングかも知れません。
乗ってみての感想をまとめてみると、軽自動車としての限界を感じる部分は確かにあるものの、乗り心地や操縦性はむしろ一つ上のリッターカークラスの車のような感触を持った車、といったところでしょうか。
まとめてみると、前述のような「大人の事情」があったにせよ、軽自動車という世界的に見ても特殊で厳しい条件のフォーマットの車の開発ノウハウを持つ三菱が持てる力を発揮し、よくまとめ上げた車という印象を持ちました。
「軽自動車」という市場の中に置いたとき、若干高めの価格が仇するような気はしますが、その外観だけでなく乗り味もクラスを超えた価値と魅力を持つ好感が持てるいい車でありました。個人的には売れて欲しい車であります。
アンチ軽自動車派や、昨今の三菱に悪い印象を印象を持っている方には、試乗をお勧めしたくなる1台でもあります。
末端のディーラーを含めて、今の三菱自動車に必要なのは自信を持つことでしょう。
i のようないい車もできたし、アウトランダーもいい車だという評判を聞いています。
既存のコルト、eK ワゴンについても、個人的には好感を持てる車だと思っています。
三菱自動車が信頼を取り戻すためには、自らが造り売っている製品に自信を持つ、即ち自らの行動にプライドを持って望むということが必要ではないでしょうか。
少なくとも、“i” はそれに足る車だと信じます。
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コメント
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最近、通勤途中によく見かけるので今度試乗してみます。
rrということでメンテナンスなんかはしやすいんでしょうか?
三菱のニューモデルということではじめは様子見という感じもありますが。デザインの差別化は良いと思います。
投稿: andy | 2006/02/01 11:39
>andyさん
コメントありがとうございます。
>rrということでメンテナンスなんかはしやすいんでしょうか?
見たところ、意外とアクセス性は良さそうでした。
>デザインの差別化は良いと思います。
改めてカタログを見てみると、スマートに似てますが、実車を近くで見てみると、その印象が薄れるんですよね。
これって、ワタシだけが感じている印象でしょうか?
eKワゴンは、無印良品にも通じるアノニマスな良さを感じましたが、iはスタイリストの色を強く感じます。
個人的には小型のピープルムーバーとして、日産キューブと並んで魅力を感じる車でありました。
投稿: nan | 2006/02/02 00:36