マツダスピード・アクセラ
普段、ウチのFD3S【絵筆號】がお世話になっているお店の担当者さんからお誘いがあり、マツダスピード・アクセラに試乗することが出来ました。
ワタシ以外にも気になっている方がいらっしゃるかもしれませんので、簡単なインプレッションを。
#2006/11/25 アクセラ15Cの試乗記も更新しました。併せてご覧下さい。
まず外観。
「兄弟分」のマツダスピード・アテンザ(以下、MSアテンザ)が、「普通」のアテンザよりもかなり迫力を増しているのに対し、こちらは一見して「普通」のアクセラとそれほど違いがあるように感じないのは面白いところです。
実際には、エンジンフード、フロントグリルと前後バンパー、そして18インチホイールが専用品になっている等、かなり違うにも関わらず、ノーマルとあまり差異を感じないのは、元々、ノーマルのアテンザ・セダンに対し、ノーマルのアクセラ・スポーツがスポーティさを打ち出した仕立てになっているので、ベースモデルとの落差がアテンザほど感じないのかも知れません。
ちなみに試乗車の車体色はコズミックブルーという、ややグレイがかった青でした。これがカタログでのイメージカラーであるトゥルーレッドだと、もう少し印象は変わるのかも知れません。
次に内装。
黒を基調とし、灰色系のコンビのファブリックでまとめられています。灰色系の生地はノーマルモデルには無い専用デザインで、黒基調の内装にいいアクセントになっているように感じました。
運転席と助手席は専用のバケットシート。
個人的には座面の前端部の高さがもう少し欲しい気もしましたが、堅さ、ホールド感も車の性格に合っていて好ましく感じました。
但し、小柄な方や体重が軽めの方には、硬かったり大きめに感じる可能性もあります。
計器盤も専用品。速度計の目盛は200km/hまで。その他はシフトレバーとパーキングブレーキレバーのブーツのステッチが赤糸になっている程度で、ノーマルのアクセラとそれほど変わりません。
さて、実際に路上に乗り出してみての感想ですが、試乗車はおろしたてらしく、数十km程度しか走行していませんでしたので、エンジンの回転等も控えめにして試乗したことを予めお断りしておきます。
走り出して最初に感じたのは、エンジンの静かさ。
MSアテンザよりも、こちらの方が静かなような気がしました。
回してもそれほど音量は大きくならず、物足りないと感じる向きもあるかも知れません。
音質も耳障りな点は無く、悪くないと思いますが、もう少々官能的な音質のチューニングがあってもよかったようにも思います。
エンジン音が静かなだけでなく、細かい振動等もよくチェックされており、ノーマルのアクセラよりも一段上級な車になった気さえします。
形式的にはMSアテンザと同じエンジンですが、ディーラーの担当氏の説明によると、若干チューニングが違うとのこと。おそらくAWDとFFという駆動形式の違いによるものだと思われますが、乗ってみた感想は特に大きな違いは無いというのが、正直なところです。
MSアテンザでも感じた、低速域からスムーズでレスポンスのいい美点はそのまま。
かつての過給エンジンからすると、驚くほど全域でのトルクの谷が少なく扱いやすい点も、そのままです。
逆にいうと、駆動形式の差があっても、それほど大きな差を感じないのは、それだけ細かいチューニングが巧みだという証左でしょう。
勿論、エンジンのチューニングだけでなく、後述する足回りや、トルクセンシング式のLSD、強化された車体とのバランスがいいのだと思いますが、大パワーの前輪駆動車にありがちなじゃじゃ馬的なところは微塵もなく、流石は今どきの高性能車だと感心させられました。
6速MTは、5、6速がやや渋く感じましたが、慣れの問題かおろしたてで「あたり」が出ていないせいでしょうか。操作感はワイヤーコントロール式の標準的なものですが、MSアテンザで感じたやや曖昧な感じはありませんでした。
ギヤ比については、MSアテンザと同様、フラットトルク型のエンジンなので、あまり多段化の恩恵が無いような気もしました。
脚まわりは、ノーマルのアクセラよりも明らかに硬めですが、MSアテンザで感じた、入力が小さな領域での不快感は全く無く、しなやかさも持ち合わせており、乗り心地もいい方だといっていいでしょう。
ノーマルのアクセラも国産、輸入車の同クラスと比較しても、いい乗り味を持った足回りですが、その美点を活かしながら、大出力エンジンに対応した、そんな印象を受けました。
今回は試すことは出来ませんでしたが、比較的高速で長時間移動した時に真価が発揮できる、そんなセッティングのように感じました。
ステアリングも正確。ややノーマルよりも重めのセッティングのように感じましたが、これもノーマルの美点を引き継いだセッティングだと思います。
全体の印象を乱暴にまとめてみると「上級で速いアクセラ」ということになるでしょうか。
個人的には、サイズの好みの問題もありますが、全体的にMSアテンザよりも、乗り味はこちらの方が気に入りました。
MSアテンザの時にも書きましたが、マツダスピードの名前から、いかにも昔ながらの「やんちゃ」なホットハッチを期待する向きには、刺激が足りず、物足りなく感じるかも知れませんが、実際にはおとなしいようでいて、充分以上に安全で速く、運転のおもしろさを備えた大人向けの車だと感じました。
そういう意味では、一見して、ノーマルと大きく変わらないようにも見える外観や、やや派手さに欠ける内装も、昔ながらの「羊の皮を被った狼」的な速いセダン好きには、好まれる仕立てでしょう。
長い時間付き合っても、比較的飽きのこない車ではないでしょうか。
ちょっと見方を変えてみると、このエンジンとシャシーを基本にして、5速のアクティブマチック(AT)を組み合わせ、23Sにあるような本革シートを備えた仕様、或いはアテンザのブラウンレザーリミテッドのような「張り込んだ」仕様があっても、面白いかも知れません。
MSアテンザに試乗した時も感じましたが、そういった仕様ではなく、マツダスピードの名前を冠したスポーティモデルとして世に出さざるを得ないあたり、やはりセダン不毛の時代なのだろうか、そんな気もします。
23Sとの差額が40万円未満。そう考えると、なかなかリーズナブルな車ではないでしょうか。
ここでも書きましたが、1.5Lが“Smart choice”だとするなら、2.0Lが“Best choice”、そしてこのMSアクセラが“Connoisseur's choice”ではないでしょうか。
メーカーや生産国にこだわらず、Cセグメントのちょっと速いセダンが欲しいという向きには、一度試乗をお勧めしたい1台です。
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