フォード・マスタング
展示車はV8 GTコンバーチブル・プレミアム。車体色はコロラドレッド、内装色はブラック。
結論からいうと、今どき珍しい「おおらかなアメ車」。
これに尽きます。でも押さえるべきところは押さえた佳作です。
各部の造作は日本車や欧州車を見慣れた目にはいかにも大ぶり。
室内外の樹脂部品の質感も、それほど高くはなく、いろいろツッコミどころは満載。
しかし何となくそれが許せてしまう気になる辺りは、人徳ならぬマスタングの「車徳」でしょうか(笑)。
外観は、オリジナルのマスタングのレプリカといっていい出来。
個人的には、オリジナルのイメージを残しつつ、今どきの感覚を盛り込んでいた先代、先々代に対していい印象を持っていたこともあり、新型はレイドバックしてしまったという失望を持っていましたが、実車を観てみると、これはこれで格好イイのは確か。
ヘッドランプは今どき珍しい丸形2灯の汎用品。ちなみに展示車に装着されていたのは、シビエのH4。レンズはある年代の方には涙ものの凹面タイプでした(!!)。
本国仕様と異なる点は、フロントグリル内の補助灯が日本の法規に適合しないため、単なるポジションランプとなることと、フロントフェンダー側面のマーカーがターンフラッシャーとなること、リアのターンフラッシャーがバンパーに埋め込みとなる程度でしょうか。
ちなみにV6モデルの実車は未見ですが、カタログ等の写真を見る限りは、V6モデルの補助灯無しの方がすっきりしていて好ましく感じます。
標準装備(V8モデルのみ)されるハリーブランド風の5スポークホイールも、それっぽい雰囲気を醸し出すことに成功していると思いますが、あまりマッチョではないか雰囲気のホイールがあってもよかったカモ知れません。
内装も本国仕様とそれほど変わる部分は無し。
本国仕様のプレミアムラインがベースのため、シートとステアリングホイールは本革張り。オーディオは日本側で用意したCD/MDプレーヤー(エクリプス製)が標準装備となります。2DINパネルに組み込まれていますので、ナビ等の取り付けも楽そうです。
インパネの意匠もオリジナル・マスタングに倣った形ですが、アルミ風の樹脂パネルは少々質感不足なのは残念。各種のスイッチ類はフォード車の標準的な配置で特に迷うところが無いのは好感が持てます。
シートは流石に大ぶり。女性等、小柄な方にはやや余し気味になるでしょう。
車体が大きいだけあって、トランクも必要にして充分以上の大きさを確保しています。日本で取り付けた大型のウーハー右側に鎮座坐して居ますが、それでもかなり広い空間が残されています。
車体の内外を含めて目に付くところには"Ford"の「ブルーオーバル」は無く、全て"Mustung"のロゴとマークしか付いていないあたりは面白いと思いました(日本で取り付けたオーディオのベゼルは例外)。
V8モデルは、これに"GT"のロゴマークが加わり、トランク中央の円形バッジ(オリジナルの給油口カバーを模している)もこれになっていますが、個人的にはここも「お馬さん」マークにして欲しかったところです(V6はどうなってるでしょうか?)。
展示車はバッテリーを外してあるということで、残念ながら幌を上げた状態を観ることが出来ませんでしたが、幌の出来もなかなかしっかりしていそうです。
メカ的なことや、実際の乗り味などは試乗できなかったので触れませんが、標準装備のトラクションコントロールのデフォルト設定が「OFF」だというのにはちょっとビックリ。
どうやら、発進のときにブラックマークを残せなくては、という理由らしいですが、ホントですか(笑)。
さて、今回、新型マスタングを眺めていて強く感じたのは、これは「マスタング」という「キャラクター商品」なのではないか、ということです。
かつてGMのカマロ/ファイヤーバードのようなライバルが存在していた頃には、ある程度対抗策を盛り込む等、競争意識を持つ必要があったと思われますが、そのような仮想敵亡きいま、パブリックイメージに忠実な「マスタング」を造るというのは、あながち間違いでは無いような気もします。
実際、本国のラインナップを眺めてみると、通常のクーペとコンバーチブルだけでなく、ホットモデルたるシェルビー500GT、V6ベースにかつてのポニーグリルを再現したポニーパッケージ等、マスタング好きの心をくすぐるようなモデルがラインナップされています。
これはいわば、「ガンダム」とか「ウルトラマン」とか、そういった出来上がった世界の中で商売をするやり方に通じるものがあるのではないかと。
現在のところ概ね好評のうちに受け入れられていることを考えると、フォードのやり方は間違っていないのではないでしょうか。
間違っていないどころか、GMのカマロ、クライスラーのチャージャー復活をみる限り、ポニーカー転じてマッスルカーとなったジャンルの「キャラクター商品」化は益々進みつつあるような気がします。
復活したライバル達が、同じ道を進み始めた今、互いに競合しない新しいジャンルができるのか、或いはまたかつてのような競争が生まれて、このジャンルが再興するのか。或いは、再び競争した結果、疲弊してしまうのか。
ちょっと気になるジャンルになりつつあるような気がします。
« ルーテシア燃費 (2006年12月) | トップページ | 嵐のあと »
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: フォード・マスタング:
» このアメ車とパーツは60年代マスタングか!? [アメ車のパーツみたいなブログ。]
本当に現代に甦った!といえる1台ではないでしょうか。どうせやるなら、こうやって昔を思い出させ、復活させるというのはすごくいいと思うのは自分だけでしょうか?いい親子だぜ!ベイビー!!!黄色もイカシてます。 [続きを読む]
「キャラクター商品」でしょうね、やはり。ひょっとして若い頃にオリジナルに乗っていたり、あこがれても乗れない少年たちだったベビーブーマー世代を狙っているのかも知れません。
となると真似が大好きな日本人は、「だるませりか」「ちぇりーくーぺ」あたりを復活させるかな(笑)。
投稿: akira isida | 2007/01/13 17:43
「キャラクター商品」ですかぁ・・・
新型マスタング、私も見るだけは見たのですが、結構好きです。
やっぱり子供のころの初代マスタングの刷り込みがあるからかもしれません。
ishidaさんのコメントを引っ張らせてもらうならば、あとは「ケンメリ」でしょうか・・
そういう意味では「ふぇあれでぃぜっと」ってこの類じゃないでしょうか?
私の周りでも若い頃S30が欲しくても替えなかった、「今ではおじさん」がこぞって「Z33」に乗っているような気がしないでもないです。
投稿: Komi | 2007/01/13 22:50