世界の傑作機125「コンベアB-36ピースメーカー」
二月に一度のお楽しみ、世界の傑作機の時間がやってまいりました。
通巻125号は、世界最大のレシプロ爆撃機コンベアB-36ピースメイカーであります。
改めてこの本を眺めてみると、意外にバリエーションが多いことに気付きます。
偵察機型や軽量化改造型(フェザーウェイトII & III)だけでなく、際物的な親子飛行機型とか原子炉搭載型、果てはジェット換装型等、その就役期間を考えると、意外に多いのではないかと。
これは、時代の背景もあるのかもしれませんが、当時世界最大を誇った機体だったこともあり、いろいろな改造を受け入れる余地があったということでしょうか。
その中でも白眉は、やはりXC-99でしょう。
と、書いてみたものの、B-36ベースの輸送機があったとは、知りませんでした。
しかも試験運用の名の下に、1機のみが10年も運用されていたとは、驚きです。
本書の解説にもある通り、1機のみしか製造されなかった試作機が、これほど長く運用されていたというのは、他に類をみないのではないでしょうか。
とはいえ、XC-99が量産化されて成功したかというと、同時期のレシプロ巨大機であるブリストル・ブラバゾンの例を見るまでもなく、難しかったであろうことは、想像に難くありません。
しかし10年も使われたということには、それなりに意味があるわけで、鉄道の大物車のように、沢山ある必要はないけど1機は欲しい、そんな種類の機体が、この手の巨大輸送機なのでしょう。
そう考えて、現代に目を向けると、アントノフAn-124が世界中で引っ張りだこの割に、追加して生産されないということにも合点がいきます(笑)。
輸送機型というと、B-58の胴体輸送用に改造された機体があったというのも初めて知りました。もしかしたらB-58の巻でも取り上げられていて、ワタシが見落としていただけカモ知れませんが(^_^;)。
ジェット換装版のXB-60は、岡部いさく氏の「世界の駄っ作機」にも取り上げられているくらいですから、詳しくは触れませんが、発注側も受注側も、B-52の「保険」とはいえ、ホントにこれでいいと思っていたんでしょうか(^_^;)。
原子炉搭載型の "Conveir Crusaider" も同様です。データが取れただけでも御の字でしょうか。
この2つと比べると、「空中空母」GRB-36Dがまともに見えてくるのが不思議です。それでも「子機」の積み込み方をみた段階で、ダメだと思わなかったのか、というのは空中給油が実用化されると知っている人間の戯言でありましょうか。
その他、本書の内容については、いつもの通りのフォーマット。技術解説で興味深かったのは、プロジェクトの査定方法について。
就役期間等からいうと「無駄遣い」との判断もできる同機ですが、それによってもたらされた派生技術をどのように判断するか、このような大規模なプロジェクトの成否についての査定の難しさを改めて感じさせます。
爆撃機を取り上げるときの定番である「オペレーションマニュアル」の項は、如何にこの時代の大型レシプロ多発機を動かすのが困難だったかということを再認識させられます。
大型機のジェット化がもたらした「福音」が高速化だけはなかったということが、このような資料からも読み取れるでしょう。
その他、ディティール写真等は、「世傑」の標準かと。
個人的には、機体前後方に装備された格納式ターレットの展開、格納の仕組みが判る解説が欲しかったところですが、あまり詳しい写真が残っていないのかも知れませんね。
とりあえず、こうやって改めて取り上げる機会の少ない機体なのは確かでしょうから、大型好きの方には、お勧めの一冊ではあります。
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