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2008/02/11

かつて永大産業というチームがあった。

すでにサッカー好きの間で話題になっていますが、快著であります。

かつて永大産業サッカー部というチームが、日本リーグに所属していました。
ワタシにとっては、ジャイロ、ジャイール、アントニオというブラジル人トリオの力もあって、短いながらも活躍したという知識しかなく、ホームタウンがどこで、どのような歴史を持ったチームか、といったことなど、これまで興味を持つことはありませんでした。

当然、創部から3年で「天皇杯で優勝する」という、常識では有り得ない目標を掲げ、しかもほぼ目標に近いところまで成し遂げてしまったという事実など、知る由もありませんでした。

本書は、その永大産業サッカー部の、創部から廃部に至るまでの過程を、チーム立ち上げに携わった河口洋氏を軸に描いた物語であります。

[初稿: 2008/02/03 00:39]
[2008/02/11 追記ついでにageました]

本書で面白いのは、サッカー部創部、そして天皇杯奪取を思いついた総帥深尾茂の発想や、同部の立ち上げと運営を任された初代監督河口洋氏の驚くべき行動力を描いた6章までの、まさに事実は小説よりも奇なりという言葉を思い起こさせるような、驚くべき内容もさることながら、日本リーグ昇格後、天皇杯決勝まで至る道程を描いた7、8章が最高です。

30数年前、山口県の海沿いの小さな街、平生町に巻き起こった熱狂を余すことなく伝える筆致は、手練れの仕事であります。

ちなみに著者は「あとがき」でも自称するように、サッカーを知らない「巨人オヤジ」の編集者。当然、永大産業サッカー部のことなど知る由はない人物であります。

しかし、サッカーに無知であるからこそ、自らも当時の平生町の人々と同様、永大産業サッカー部に魅せられ、のめり込んだ結果が、前述の7、8章での各試合の詳解のような熱狂的な文章に繋がったのでしょう。

これが、なまじサッカーに知識のある書き手なら、当時の対戦相手やリーグの背景等々、「サッカー的」なコンテキストを取り混ぜて解説したい欲に駆られていたと思いますが、その点の知識が邪魔にならなかった分、純粋に永大産業サッカー部の物語に没入できたという幸せな成功例をここに見ることが出来ます。

さて、本書の最終章では、永大産業サッカー部が遺した遺産について語られます。

ここではそれに触れませんが、平生町、そして山口県を中心とした地域のサッカーに対して影響は、決して小さなものではなかったことが判ります。

吉田鋳造総合研究所」さんによれば、「永大産業サッカー部」は今も健在。 その公式サイトによれば、2004年に再発足以来、柳井市Yリーグで純粋な「愛好者」のクラブとして活動中の由。
このクラブこそ、本書でも語られている、サッカー部の管轄が工場から本社に移管されたとき、会社から切り捨てられながらも、サッカーを愛した有志によって改めて立ち上げられた「2軍」の精神を引き継いだクラブに他なりません。

まさに「物語」は、まだ続いているのです。

そして、全く永大産業とは無関係に見える、我がコンサドーレ札幌。
詳しくは本書を参照願いたいのですが、前身である東芝サッカー部は、太くはないが、決して細くもない線で、永大産業の「物語」と結ばれていました。
もしかしたら、永大産業の廃部がなければ、かつて「二部の優等生」と呼ばれた東芝は別な形で存在していたのかも知れません。

読了後想ったのは、現在の永大産業サッカー部を見るまでもなく、永大産業の「廃部」は、ひとつの物語の終わりだったかも知れませんが、別な物語のはじまりだったのだということです。

それ以外にも、サッカー好きであれば、いろいろ考えさせられたり、心に残る事柄の多い、好著であります。
拙サイトをご覧いただいている、ご常連各位にはお勧めの一冊であります。

ところで、日本のサッカーにまつわる物語をかたるとき、そのはじまりを、Jリーグ元年である1993年からはじめようとする向きがあります。

実際には突然Jリーグが出来たわけではなく、その前身たる日本サッカーリーグはそれまで30年近い歴史があります。
更に時計を戻すと、日本にサッカーが伝えられて以来、学生とそのOBを中心としたコミュニティによって支えられてきたという歴史があります。

Jリーグ発足以後の物語は、複数のメディアで取り上げられる機会は増えていますが、それ以前の物語が語られる機会は、逆に減っているような気がします。

個人的には、J以前の物語こそ、日本のサッカーの基盤を創った時代であり、語られるべき物語は、それこそ枚挙に暇はない筈なのに、それが蔑ろにされる傾向があることに危惧を感じています。

願わくば、本書のように、J以前の物語を語り継ぐ良書がこれからも続けて出版されることを願って止みません。

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コメント

んちは。

鋳造さんご推薦だったので、私も年末年始に読み倒しました。
なかなか泣けますよね。(ユニも赤黒だしw)

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