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2023/07/15

和田誠著『装丁物語』

装丁という仕事がぼくの営業品目の中でシェアを占めてきたのは、一九七二年の遠藤周作『ぐうたら人間学』(講談社)あたりからかな、と思います。 初めて装丁をしたのは六一年で、そのあとポツポツとやってはいたのですが、 数はそれほど多くはありませんでし た。(P7「1 装丁で忙しくなり始めたころ」)
このように始まることから分かるように、著者の仕事の中でも重要な位置を占めていた装丁の仕事についてのエッセイがまとめられている。

割と専門的で本好きにも馴染みの薄い用語が随所に出て来るが、それぞれ丁寧に解説されているのと、和田さんらしい柔らかい口語体の文体も相俟って、さほど難しさを感じないあたりは流石。
和田さんの装丁と聞いて思い出す書き文字の話や、ご自身で著書があったり、装丁を以来されることも多かった映画関係の仕事についての話も多くのページが割かれているので、装丁の話だけでなく、和田さんの著作、画のファンにも楽しめる内容だと感じた。
文庫は基本的にカバーの表しかいじれないとか、初出の装丁をそのまま使いたいといっているのが印象に残ったが、それとも関係あると思うが、他人が手がけた本を装丁し直したり、自分の仕事を他人に装丁し直してもらうのは嫌というあたりに、著者のこだわりを感じた。
最後の章でバーコード導入に関するエピソードが綴られていたが、デザイナー抜きで流通側の効率最優先で話しが進められていったというのは、日本の出版史における証言としても重要ではなかろうか。
著者没後の文庫化なので、この本の装丁が気になる向きもあると思いますが、カバーデザインはご本人とある通り、底本の白水社uブックス版に準拠しているようですね。

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