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2023/07/13

向田邦子著『寺内貫太郎一家』

群ようこ著『還暦着物日記』 に収められていた、向田邦子氏と着物に関して綴られた文章の中に『寺内貫太郎一家』について触れている箇所もあり、読みたくなったので、同書を読了後に買って読んだ次第。

 

初めて読んだが、小説としては台詞で話を展開させることに重きが置かれており、台詞の間の文章もやや硬い感じがして、正直なところ完成度が低いという印象を受けた。但し、TVドラマの原作で、台詞とト書きを起こす目的の文章と考えると、それほど違和感はない。
いわゆる人情喜劇として捉えられるだけでなく、主人公の貫太郎は向田氏の父親をモデルとし、娘から見た父親への愛憎も込められた作品だといわれるが、改めて原作を読んでみると、別の感想が芽生えてくる。
それは、当時既に消えつつあった明治、大正から大戦前まで続いていた、辛うじて江戸の香りを残す東京の風俗、街の風情の記憶を留め、懐かしみ、惜しむという作者の視線を感じたということである。
そう思いながら、TVドラマ版を思い出してみると、当時のTBSのファミリードラマとしての典型である、全てスタジオセットで撮影するというスタイルが、その消え行くものを惜しむという姿勢に打ってつけだったように思える。
当然、フィクションではあるが、そういった作者の感傷を伝えていくという点でも、読み継がれ、繰り返し観る価値がある作品なのではなかろうか。

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